はじめに
Appleの年次開発者会議 WWDC 2025 が開催され、iOS 19やmacOSのアップデートとともに、内蔵ブラウザエンジン WebKit を採用する Safari 19 の新機能と進化点が発表されました。
近年、SafariはWeb標準への準拠スピードを急激に加速させており、他のブラウザエンジン(Blink, Gecko)との相互互換性を高める取り組みに力を入れています。
本記事では、WWDC 2025で明かされたSafari 19の新機能の中から、特にWebデベロッパーが注目すべき「WebGPUのフルサポート」「拡張機能の強化」「新しいCSSプロパティ」について分かりやすく解説します。
1. WebGPU の標準有効化とグラフィックスの高速化
今回のアップデートにおける最大のトピックは、Safari 19で WebGPU API がデフォルトで有効化 されたことです。
WebGPUは、WebGLに代わる次世代のブラウザ向けローカル3Dグラフィックスおよび汎用計算(GPGPU)の標準規格です。
メリット
- 劇的な描画処理の高速化: メタル(Metal)やダイレクトX(DirectX)といったOSネイティブのモダンなGPU APIに直接アクセスするため、WebGLに比べてオーバーヘッドが極めて低くなります。
- ブラウザ上でのAI/機械学習の実行: EdgeやChromeに続きSafariでもWebGPUが利用可能になったことで、Webアプリケーション内でのリアルタイム画像処理やローカルAIモデル(オンデバイスAI)の実行が、MacやiPhone上でも爆速になります。
2. ユーザープライバシーとセキュリティのさらなる強化
Appleが最優先課題としているプライバシー保護についても、Safari 19でいくつかの防御壁が追加されました。
高度なトラッキング・フィンガープリント防止
ブラウザの画面解像度、インストールされているフォント、デバイスの各種パラメータなどを取得してユーザーを一意に識別する「ブラウザ・フィンガープリント」に対する対策が強化されました。
Safari 19では、これらのパラメータを要求された際、ブラウザ側が自動的に「標準化された(あるいは一部ノイズを混ぜた)ダミーのデバイス情報」を返すようになり、サイト間での隠れた追跡を強力にブロックします。
3. 最新CSS標準への準拠と表示互換性の向上
レイアウトやUIの表現力を引き上げるためのCSSのアップデートも多数行われました。
Masonryレイアウトのネイティブサポート(実験的導入)
レンガを敷き詰めたような不規則なグリッド配置(Pinterestのようなスタイル)を、JavaScriptなしで実現する grid-template-rows: masonry の標準化が進められています。Safari 19ではこのプロパティのWebKitへの統合とバグ修正が進められ、実用フェーズに入りつつあります。
Scroll-driven Animations の完全サポート
スクロールの進行状況(スクロール量)に連動してCSSアニメーションを動かす scroll-timeline などの仕様がフルサポートされ、複雑なパララックス効果やインジケーター表示がJSのイベントスクロール監視なしで実装可能になりました。
/* スクロール進行度と連動する進捗バーの例 */
@keyframes grow-progress {
from { transform: scaleX(0); }
to { transform: scaleX(1); }
}
.progress-bar {
animation: grow-progress auto linear;
animation-timeline: scroll();
}
まとめ
Safari 19は、WebGPUの標準化やスクロール連動アニメーションの統合など、Webアプリケーションをよりデスクトップアプリに近いリッチな質感で動かすための重要な機能が揃ったアップデートです。
かつて「新しいIE」と揶揄されることもあったSafariですが、現在の急速なアップデートサイクルによって、Web標準を牽引する存在へと戻りつつあります。新しいWebKitの進化を捉え、デバイスパフォーマンスを限界まで引き出す開発を進めていきましょう。
